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★『月光綺譚』より~星を拾った夜 ※未掲載作品

 星を集めに出かけよう、と思って部屋を出た。だって昨晩は流星群の夜だったもの。きっと幾つかは落ちた流れ星がまだ残っているのに違いない、、そんな気がしたものだから。
――という訳で、部屋のドアをキチンと閉めると、階段を降りて夜の街へと出たのだった。(そんな時、何だかステキな事が待っている気がして、少しだけ心が浮き立つんだ、いつも。何故だろ)
 最初、星のなる樹を見つけたと思った。よもやこんな処にと思ったのだったが、暫く外に出ないでいた間に季節は変わり、街はすっかりilluminationで彩られていたのだった。見れば向こうの通りの街路樹にもたくさんの星が瞬いている。路地を曲がると道が暗くて最初は物のカタチでさえも判然としなかったけれども、よくよく目を凝らすと、あったあった銀色に輝く光の欠片が。アスファルトの隅でぴかりぴかりと光っている小石は、あれは星の欠片なのに相違無い。ズボンのポケットに幾つかの星を詰め込むと、それでもうぼくはすっかり満足してしまったのである。そうしてその晩、ぼくはベッドの枕元にお星様を並べると、夢の続きのように眠ったのだった。夢の中でも星の光に包まれるような、そんな気がして・・・。
 ところが暫くして目が覚めると、枕元にただの小石が無造作に散らばっているのを発見したのである。はてな、これが一体星の欠片であったのか。或いは時刻になると再び輝き出すのだろうかと思い、暗くなってから改めて取り出してみたりもしたけれども、やはりそれは元のままなのであった。空にある時にはあんなに綺羅々々と輝いて見えたのに、地上に落ちてくるとどうして輝かなくなるのだろう。空のうえで光を出し尽くしてしまった所為なのか、それともこれはやはり最初から夜露に濡れた小石が水銀燈の灯に反射して見えていたに過ぎなかったのか。
 結局のところ僕は、その後何だか急にぼんやりとしてしまって、いつしか持っていた小石も何処かへやってしまったのだった。では星集めに出かけたあの晩の行動がすべて徒労であったのかというと、実はそうでは無い。僕にとって、やはりあれは必要な夜だったのだ。ジッサイその夜の僕は、タイヘンに価値のある拾いモノをした―という事になるのである。

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★『月光綺譚』より~星空のArpeggio

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 或る晩、モーターサイクルを駆って丘の上の天文台へと出かけたのだった。坂道を上って行くと成層圏を抜けて、そのまま星空まで届きそうな夜だったから。魔法瓶にローズティーを入れて、深夜のピクニック。此処からは全天の星座が見渡せる。天文台の梯子を傳って独りドーム型の天井に登り、持って来たローズティーを飲みながらお星様を見ていると、昔読んだ外国の物語にちょうどこんな場面があった事を思い出す。此処は今、ぼくだけの星なのだ。それが証拠に、空の上ばかりでなく眼下にも星空が拡がっている。街の灯が星の光のように瞬いていたのであった。それでもう何処までが地上で何処からが空なのか、一見して判らなくなるほどに。
――地上にも星空があったのだ
自分のいた街にこんなにも星の光が溢れていただなんて、僕はすっかり忘れてしまっていた。。。



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★『月光綺譚』より~流星群の夜

 椅子に凭れて窓の外に映る星を眺めながらウトウトとして、気がつくと時計は21:30を廻っていた。

 もうこんな時間か

 月の綺麗な夜だったので、何だかこのまま眠るのも惜しいと思い、僕は散歩に出る事にした。クローゼットから上衣を取り出して、靴を履いた時に振り返って時計を見ると10分過ぎていた。
 そのまま外に出て、月明かりに照らされた舗道をいつもの四つ角の方へと歩いた。すると突然、目の前を一条の眩しい光がさっと通り過ぎた。一体何だったろうと思いながらそのまま歩いていると、シルクハットを目深にかぶった全身黒ずくめの紳士がこちらに近づいて、僕に声をかけてきた。

 ―私の連れを見なかったかね。ちょっと目を離した隙に逃げられてしまってね、、

 僕は何のことだかさっぱり分からなかったので、一体何の事だと訊ねると、紳士は

 ―だって今夜は流星群の夜ですよ

と、僕のすぐそばまで来て、耳元で囁いた。

 僕は何故だか一瞬ヒヤリとして、そう言えば今夜は牡牛座の流星群がやって来る日だった事を思い出した。ハッとして振り返ると、もう紳士はどこにもいなかった。

 気がつくと僕は靴を履いたまゝ椅子に凭れて微睡んでいた。時計は21:30だった。夢の続きでも見ていたのかと思ったが、馬鹿々々しくなってそのままベットに入って寝てしまった。
 
 きっと誰にでも自分だけの時間というものが、ある。





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★『月光綺譚』より~長い夜

 満月の晩に、誰もいない細い路地を独りで歩いていると、僕の歩く前方に自分の影が細長く伸びているのが見える。辺りはやけにしいんと静まり返り、ただ靴音だけが夜に溶け込むように響いている。それだから僕はいつしか自分の影を追いかけるようにして歩いていた、間延びした空気の中を。それにしても、さっきからずっと気になっていることがある。確かに今夜は満月だが、この影は少し長過ぎるんじゃないだろうか......その時、足元の影がひとりでにむくっと起き上がったかと思うと、僕の肩をかすめて隣の塀によじ登った。
 黒猫だ。

―おわあぁぁぁ

 猫は薄気味の悪い声で一声鳴くと、身じろぎもせずにじっとこちらを見据えている。僕は構わずそのまま行こうとしたら塀の上から声がした。

―待て

 振り向くと猫がまだこちらを見ていた。他には誰もいやしない。僕は猫に呼び止められるいわれはなかったので、また歩き出そうとした。すると背後から更に声がする。

―おわぁぁぁあ。お前は3年前の冬、今日と同じような時間にここを通った。3年後の満月の夜にもきっとここを通るだろう。

 僕はまたひとりで夜道を歩き出した(猫なんぞに関わっていられるものか)。ふと足元を見れば、地面に伸びる自分の影。やっぱりどうしても長過ぎる気がする..。




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★『月光綺譚』より~水晶の夜

 全てが硬質のもので出来ている夜、両手を上衣のポケットに入れながら独り坂道を歩いていると、やがて坂の向こうにオリオン星座が見えて来た。路傍には落ちた夜露が幾つも光っている。このまま坂を上って行くと、いつか空のオリオン星座まで辿り着けるような気がして、僕はどんどん歩いて行ったのだった。それで、ちょうど見晴らしの良い処まで来たものだから、ガードレエルにちょこなんと腰掛けて、暫し幾千もの街の灯を見下ろしていると、教会の尖塔に三日月が引っかゝっているのが見えた。おや!と思った時、突然僕の後ろの方から一陣の風が吹き上げたかと思うと、夜露の雫が空高くに舞い上がった。それは水晶の欠片であった。一筋の滑らかな線を描いてそれらは一斉に夜空へと飛び去って行く。それは即ちMilky-Wayである。

 その光景を見ながら僕は、"嗚呼、もう季節が変わるのだな"と、そんな事を感じていたのだった。




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