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★『月光綺譚』より~水晶の夜

 全てが硬質のもので出来ている夜、両手を上衣のポケットに入れながら独り坂道を歩いていると、やがて坂の向こうにオリオン星座が見えて来た。路傍には落ちた夜露が幾つも光っている。このまま坂を上って行くと、いつか空のオリオン星座まで辿り着けるような気がして、僕はどんどん歩いて行ったのだった。それで、ちょうど見晴らしの良い処まで来たものだから、ガードレエルにちょこなんと腰掛けて、暫し幾千もの街の灯を見下ろし...

★『月光綺譚』より~星座探しの夜

 タクトくんの家から歩いて帰る途中、人っ子ひとりいない深夜の路地をぽつぽつと歩いていると、向こうの十字路の真ん中に少年が立っていてじっと空を見上げているのだった。春にしてはまだ少し肌寒い夜のこと。 「こんばんわ」 「あぁ、こんばんわ」 「君は其処で何をしているの?」 「星を探しているんです」 よく見ると、その手には星図盤が握られているのだった。この街にも星を探す人がいたのだと、僕は何故だかホッとし...